IPA2024 審査結果発表

審査講評  
志村美治 審査委員長
志村美治(第5回IPA特別審査員賞受賞)
 2024年度の作品は、社会要求に対する回答がインテリアプランナーと、様々な知恵を持つ人々や環境・技術との会話がされている事が評価された。受賞作品は、9作品となり空間のみでなく次の領域に接し、反応していく増幅力が感じられた。
 最優秀賞は、2作品である。
 ●ToyotaTechnicalCenterShimoyama車両開発棟・来客棟:自然環境と対話をしながら、抽出した丁寧なプロセスデザイン力
 ●LOGIPORT TOWN:大規模建築が、街と繋がり会話する方法を、建築・ランドスケープと一体となり提案した創出力
 この2作品は、インテリアプランニングが閉鎖的な空間デザインのみでなく、物理的・精神的にも周辺環境と繋がりを、問題解決の重要な要素として考慮することが大切になってきたことを示唆している。
 人間は、歩き、移動をし、思い出の中を自由に回遊する生き物であるし、実際の「デイメンションを超えた」ところに、到達すべき場所があるように思える。日々、一つ一つの寸法を決めていく先に大切な事が待っていてくれるなら、触れたことのない知恵に触れてみるのも次の領域での答えを導き出す一つの方法である。
 
原 兆英 審査委員
原 兆英(第4回IPA特別審査員賞受賞)
 本賞審査では、毎年、応募作それぞれに想いを寄せています。個々の与件を乗り越え、プランニングとひたむきに取り組む姿が想像できるわけですから。応募要項に挙げられた審査基準には、そうした私情を排する役割もあるのです。最終審査に臨んで、さらに私は、「驚きや発見」のある作品との出会いを楽しみにしていました。
 今回、最優秀作品の一つに選ばれたのは、「Toyota Technical Center Shimoyama」でした。間伐材や建築工法の採用は、世界屈指の自動車メーカーが森づくりに寄与する姿勢を世界企業の矜持に重ね、審査基準に応えていると評価しました。
 では、「驚きや発見」があるかといえば、エコフレンドリーな素材や工法の点において、現代社会が直面する課題解決に対応した優れた作品でした。ただ、もう一歩突き抜けた何かが欲しかった。例えば、応募者が願う未来の姿など…インテリアプランニングには、もっとつくり手の想いを投影してもよいと思います。
 大規模なプロジェクトでなくとも、小規模な空間なら個性的なコンセプトを表現できるはず。次回は、さらに個性的で意欲的な空間との出会いを期待しています。
 
山下奉仁 審査委員
山下奉仁(日経デザイン編集長)
 インテリアプランニングアワードの審査に初めて参加させていただきました。
 店舗からホテル、オフィス、学校、果ては大型複合施設やランドスケープまで、規模やジャンルの異なる空間を「インテリアプランニング」という切り口で評価していく視点が新鮮な半面、審査は困難を極めました。
 特別奨励賞に選んだ「神戸薬科大学A棟」は、「従来1カ所集中の図書館システムを解体し、分散配置する」というチャレンジを評価しました。しかし、長年親しんできたシステムを解体するのは簡単ではありません。「1カ所のほうが勉強しやすい」「図書館という独特の空間に入ることが気持ちのスイッチになる」「本の管理が大変」といった意見は当然出てくるでしょう。そこでめげず、試行錯誤してアップデートし続けることを期待します。
 また、他の審査委員の方々と議論していく中で、個人的に課題として見えてきたのが「コンセプト」の扱い方。どの案も入選しているだけあってコンセプトは明確なのですが、表層的に捉えすぎていたり、尖ったコンセプトに引っ張られすぎて快適性があまり考慮されていないのではと感じたりするものもありました。そのコンセプトが本当に人の心を動かすものになっているか、そして地味ですが、その空間で快適に過ごせるかどうかも掘り下げていただければと思いました。
 

 

最優秀賞

優秀賞

特別奨励賞 山下奉仁賞

入 選