審査講評 | ||
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審査委員長 | ||
志村美治(第5回IPA特別審査員賞受賞) | ||
2023年度は、急激に加速し多元的となるであろう未来に対し、進化し続ける社会システムと人の間に立ち、インテリアプランナーが持つべき「ことば」で双方を繋いでいく空間が評価された。受賞作品は10作品となり前回にも増し、インテリアプランニングが広域で長期的に必要とされていく事を感じられた。 最優秀賞は、3作品でありロジカルなパッケージを超えて、「ことば」を持っている。 ●バスターミナル東京八重洲:旅人の高揚感や不安感に、真摯に対応したプログラム力 ●ORGATEC TOKYO 2022:ミニマムなシステムによる、ブランディングの構築力 ●五島リトリートray:リゾートスタイリングを、無作為なるまでに昇華させた表現力 インテリアプランニングは、様々な条件を整理・調査し問題点を導き出し答えを説明してゆくことにある。そして我々の説明とは言葉ではなく「美しい」ことにより伝えられていくものである。これらの作品には、それがある。 加速度的に、文明(技術・社会システム)と文化(人)の距離が、開いていく現代においてロジカルで真摯なアプローチと並行して、伝える「ことば」をしっかりとプロットしていくことが重要な価値となっていくであろう。 インテリアプランニングは社会や人にとって、飾りではないのだから。 |
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審査委員 | ||
原 兆英(第4回IPA特別審査員賞受賞) | ||
まず今回、小規模空間の作品が増えたことを嬉しく感じている。最優秀作品に選出された住商インテリアインターナショナルのORGATEC TOKYO展示ブースもそのひとつだった。 本作を最優秀受賞作とした評価には、秀逸なアイデアと濃密な意志を6×8mのスペースに凝集した手腕があった。狭小空間ゆえに来訪者の目は細部に届き、必然的にデザイナーにはディテールを詰め切る力量が問われる。本空間の主役は家具であり、その原材料を使った光と色彩の空間演出は大胆だ。美意識だけはでなく優れた創造性が伝わってくる。展示会場における「記憶に残る体験」という作り手の狙いは、視覚心理を刺激するデザインとして体現されていた。 一方、バスターミナル東京八重洲は対極となる大空間だ。公益性が問われる中で要件を整理し、新たなデザインの可能性をまとめあげた総合力が目を魅いた。場の象徴性と機能性を同両立させ、バスターミナルのデザイン領域に新風を吹かせた点が最優秀作にふさわしものだった。 年々応募数が増えてジャンルも多彩になってきた。そのクオリティも上がっている。昨年同様にグランプリ相当の作品には出会えなかったが、その萌芽は確かにあり、期待はふくらむばかりだ。 次回はさらなる意欲作を大いに期待している。 |
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審査委員 | ||
花澤裕二(日経デザイン編集長) | ||
インテリアプランニングアワードの審査に参加させていただくのは2度目です。応募作品は前回同様、実に多様であり、かつ、どの作品にも評価すべき長所があり、審査は難しいです。最優秀賞に選ばれた3作品を見ても、それぞれ公共交通施設、期間限定の展示ブース、ラグジュアリーホテルと、ジャンルが大きく異なります。逆にいえば、インテリアプランニングが幅広い領域で必要とされ、力を発揮し得るということでもあります。 前回の審査総評では「美と利と知」の融合という話をしましたが、その中でも特に、これからのインテリアプランニングに求められているのは「知」の部分。社会の変化を的確に捉え、課題に対応し、一歩先を見据えた提案を盛り込むことだと思います。もちろん美と利も欠かせません。 社会を変えていくイノベーションの種は実は身近なところにあったりします。大きな社会課題の解決も、まずは小さな一歩から。つまり作品の規模の大小は関係ありません。小さくてもキラリと光る、そんな作品がもっと増えるといいと思います。 特別奨励賞は、これからのインテリアプランニングの可能性を広げるような視点や取り組みを評価したいという意図で新設しました。この作品は林業という分野において「持続可能性」「地方と都市のつながり」などのテーマに向き合い、重要な視点を提供してくれています。 |