北川原 温賞
中村 勉賞
作品名称:『LIXILギャラリー巡回企画展 会場構成』
応募登録者名:原 兆英
応募カテゴリー:その他
審査講評(北川原 温)
今回初めて審査に参加させていただいた。インテリアデザインは学生時代から興味があり、建築という重い語に対して、インテリアというカタカナの爽やかさに何となくかっこよさを感じていた。そんな頃、大学の授業で当時丹下健三と一緒に仕事をしていた構造設計家の坪井善勝氏のレクチャーがあった。「建築は外側から考えちゃあいかん。内側から考えるんだよ、内部空間から発想するんだよ。」と言われたのを覚えている。
考えてみれば伝統的な日本の民家などは、外壁というものがほとんどなく、雨戸や障子を開ければ縁側を介して中も外もつながる、つまり日本建築には内部空間しかない、外も内になる。外側と言えば屋根くらいのものだ。というわけで、建築物にあえてインテリアという限定を与えるのは少し抵抗があるが、インテリアが重要であることは確かだ。そういう意味からもこの賞は大きな意義があると思う。
応募作品は実に多種多様で驚いた。しかしこれはすごい!という作品がなく少々残念な気がした。実際はもっと面白い作品がつくられていると思うので、この賞に応募したいというインセンティヴを高める工夫が必要ではないかと感じた。
審査員賞については、原兆英・ジョイントセンターによる西山夘三展(LIXILギャラリー)を選んだ。この作品は展示物の内容を深く理解していること、限られた空間の大きさやマイナス面を冷静に把握していることにまず好感をもった。そして、そうしたベーシックなスタディの上に設定された素材、明快な構成はまさに直球で、見事に成功している。一見、デザインを抑制した作品のように見えるが、よく考え抜かれていて、デザインのレベルが高く、知的であり、独特の品格を感じる。
審査講評(中村 勉)
LIXILギャラリー「超絶記録!西山夘三のすまい採集帖」
西山夘三は京大の建築計画学の大家として、食寝分離論を説き、東大の吉武泰水、鈴木成文研究室にも影響を与え、DK型間取りの提唱者として知られている。この計画学研究者がその理論の原点を、世にある住まい方から考えた考今学資料がこの採集帖だ。これを大阪、東京の二か所の小さなギャラリーで見せようとしたのがこの展示である。しかもこれは西山夘三という建築家の作品展示ではなく、西山夘三という人間の思考の展示だ。その分量のすごさからしても、思考の深さからしても多分どのような大きな展示会場であっても大変難しいことだろう。それをこの小さなギャラリーで大変豊かに示しているところが秀逸だ。
展示空間の全体は、質素で自然体で、素朴である。中央の展示台照明は紙コップだ。壁展示はジャンルごとに仕切られているが、仕切り線は釘で張られた紐だ。展示はクリップでとじられている紙の束を一枚一枚めくっていくと達者な漫画風の絵によって、西山が各地のすまいかたを調べたときの興奮が伝わってくる。西山の採集帖を好奇心からめくってみるという行為を展示の方法にしているところがすごい。めくると西山の頭脳を覗き見るしかけになっている。めくり始めるとどんどん深くなって、見る人の好奇心も刺激されるだろう。