中村勉賞
作品名称:『リアルカタログ-mokuzai.com MARUHON』
応募登録者名:志村 美治
応募カテゴリー:商業施設
審査講評(中村勉)
たった38㎡の中に濃密な空間と情報、そして森の空気が詰まっている。無垢の木材のショールームだが、表面だけを見せようとする一般のショールームと違って、ここでは木片は重ねられ、横積みにされている。手に取って木の香りをかいでほしいそうだ。
その無垢の木片を四角い格子の棚に置き、天井までの立体格子が空間を緩く仕切っている。外からもこの格子を通して内部の人の動き、商談の様子も見て取れる。あたかも森の木漏れ日の中にいるようだ。
センターグリッドではさらに狭い空間で密度の濃い商談が行われる。開発中の商品なども見せながら、木の香りを楽しみ、硬さ、自然光の下の色、エッセンス、含水率、コストなど、利用者と原産地を結び付ける。木材の表面は人工的だ。本来の木材の良さは森の良さ、水の良さ、そして木の生命力と太陽の力なのだ。そうして硬い良い木材が生まれる。
利用者がイメージを膨らませることが出来るのもその森の中のような格子の中なのだ。あたかも材料のリアリティは単に見える表面ではなく、小さな木片の内部にある。それを分かってくれといっているようだ。